はじめに
読書感想文を書くにあたり、私が選んだ本は、仲本千津さんの「アフリカで、バッグの会社はじめました」という一冊です。この本は、社会起業家である仲本千津さんが、アフリカのウガンダでバッグブランド「RICCI EVERYDAY」を立ち上げた経験を描いたドキュメンタリーです。最初にこの本を手に取ったとき、私は表紙の印象から「ただのバッグ紹介の本だろう」と思っていました。しかし、実際に読んでみると、それは単なる商品紹介の本ではなく、困難を乗り越えながらも自分の道を切り開いた女性の物語でした。
第1章:進路決定の背景
この章では、仲本さんが幼い頃から持っていた夢や、26歳までの人生が描かれています。小学生の頃は医師になることを夢見ていた千津さんですが、ファッションとは無縁の生活を送っていました。そんな彼女が、アフリカンプリントという独特の布に魅了され、バッグブランドを立ち上げるまでの過程が語られます。特に興味深かったのは、彼女がシングルマザーたちと一緒に事業を始めたことです。この選択は、単なるビジネスではなく、社会的な意義を持つプロジェクトであることを示しています。慈善活動のように「買ってください」というのではなく、純粋に日本の人々に「買ってほしい」という思いが込められていた点も印象的です。また、「リッチーエブリデイ」は創業当初から注目を集めていたブランドでした。
僕が感銘を受けたのは、彼女が自分の人生を変えるために新たな道を模索し、最終的にその道を見つけた点です。彼女のように、新しい挑戦に果敢に挑む姿勢は、私たちが何か新しいことを始める際に重要だと感じました。
第2章:幼少期と社会人経験
千津さんの子ども時代と社会人としての経験が語られるこの章では、彼女がどのように成長していったのかが明らかになります。静岡県で生まれ、4人きょうだいの一番上で、勉強ができ、やんちゃだった千津さんは、小学5年生のときに「医師になって、国境なき医師団に入りたい」という夢を持っていました。しかし、理系科目でつまずき、その夢を諦めることになります。これをきっかけに、国際関係論を学び、国連で働くことを目指すようになりますが、その夢も色褪せてしまいます。この過程を経て、彼女は自分自身を見つめ直し、新たな進路を模索することになります。
この章を読んで、僕は千津さんの柔軟な思考と、環境や状況に応じて進路を変更する能力に感心しました。多くの人は、最初に抱いた夢を諦めることに抵抗を感じるものですが、千津さんは自分に正直であり続け、その都度新しい道を見つけていく姿勢を示しています。このような柔軟さは、現代社会において非常に重要だと感じました。
第3章:銀行での経験と転機
この章では、千津さんが大手銀行で働いていたときの経験が語られます。彼女は銀行のあり方に違和感を感じ、自分の個性ややりたいことが抑え込まれているように感じました。その結果、彼女は自分の大好きな服装で銀行に行き、さらに違和感を抱くようになります。もともと、飲み込みが早く、休日にはカフェでノートを開いて勉強していた千津さんですが、東日本大震災を経験したことで、「このままでは後悔する」と感じ、アフリカ関係のNGO「笹川アフリカ協会」に応募します。面接では、英語でがむしゃらに自己アピールをし、その熱意が評価されて採用されました。その後、銀行の上司に「一回アフリカに行ってきな」と言われ、友達がいるスーダンに行きました。そして最終的にウガンダへと転勤します。
この章では、千津さんが自分の道を模索し続けた結果、ついに自分の本当にやりたいことを見つける過程が描かれています。彼女の決断力と行動力には非常に感銘を受けました。私たちも、自分が本当にやりたいことを見つけたときには、勇気を持ってその道を進むべきだと感じました。
第4章:ウガンダでの出会いとブランド立ち上げ
ウガンダでの生活が始まり、千津さんは「アフリカンプリント」と呼ばれる綿の布に出会います。これが彼女の人生を大きく変える出会いとなりました。この布を使ってワンピースやバッグを仕立てたところ、日本の友人たちから大好評を得たことで、ビジネスを始めることを決意します。ある日、何人かのシングルマザーが「私たちも参加したい」と千津さんの噂を聞きつけて集まってきました。彼女は、器用なシングルマザーたちと協力し、革と「アフリカンプリント」を使ってバッグを作り始めました。作ってみると「これはいける」と感じ、知人が家の一角を貸してくれることになり、そこから事業がスタートしました。
この章で僕が特に印象深かったのは、千津さんが地元のシングルマザーたちと協力してビジネスを始めたことです。単なるビジネスではなく、彼女は社会的な意義を持ったプロジェクトとしてこの事業を捉えていました。このように、ビジネスが社会に与える影響を考慮することの重要性を感じました。
第5章:販売戦略と家族の協力
ブランドを立ち上げた後、千津さんは日本での販売戦略を考え始めます。彼女は、お母さんの律枝さんに協力を依頼し、「一緒に会社の代表になってよ」と頼みます。律枝さんは快く引き受け、さらに百貨店での飛び込み営業を成功させました。この報告をタクシー移動中に聞いた千津さんは、驚きすぎて後部座席からずり落ちてしまうほどでした。律枝さんの営業力と協力のおかげで、千津さんは日本での販売を順調に進めることができました。
この章では、家族の協力がビジネスに与える影響の大きさを改めて感じました。千津さんが家族のサポートを得ながら、自分のビジネスを成功させていく姿は、非常に力強いものでした。家族の支えがあることで、困難な状況でも前進する力を得ることができるということを、この章を通じて学びました。
第6章:社会的責任とセーフティネット
千津さんは、社会にセーフティネットがない現実を受け入れ、自らの会社でそれを作ろうと決意します。彼女はスタッフやその家族の医療費を会社で負担し、必要な場合には無利子で貸し出す仕組みを導入しました。これにより、スタッフたちが安心して働ける環境を整えることができました。
この章で描かれているように、千津さんはビジネスだけでなく、社会的な責任も果たそうとしています。企業が社会に対してどのように貢献できるかを考え、実行に移す姿勢は、私たちが将来どのように社会と関わるべきかを考えるきっかけになりました。
第7章:ファッション業界のダークサイドとの向き合い
事業を進める中で、千津さんはファッション業界のダークサイドに直面します。例えば、使用後の染料が川や湖に直接捨てられている現状や、ファストファッション(大量生産と大量廃棄)の問題、そして「アフリカンプリント」の違法コピーなどです。千津さんはこれらの問題に積極的に取り組み、ファッション産業をより良い方向に変えるための努力を続けています。特に、ウガンダの「アフリカンプリント」はコピーが多いため、千津さんはガーナまで飛び、正規品の「アフリカンプリント」を購入して工房に持ち帰りました。
この章を読んで、私はファッション業界の裏側にある問題について初めて知りました。消費者として、私たちが購入する商品がどのように作られているのかを理解し、その影響について考えることが重要だと感じました。千津さんのように、問題に気づき、それを改善するために行動することが求められていると強く感じました。
第8章:ウガンダ産の素材との出会い
千津さんは、「アフリカンプリント」に代わるウガンダ産の素材を探し求め、最終的に「バーククロス」という木から作られた素材に出会います。彼女はこの素材を使ってバッグを作り、そのバッグも見た目が温かいということで人気を博しました。
この章では、千津さんの探求心と地元の素材を活かす姿勢に感銘を受けました。彼女はただ製品を作るだけでなく、ウガンダの文化や伝統を大切にしながら事業を展開しています。このような姿勢は、持続可能なビジネスの在り方を示しており、私たちもその意識を持つべきだと感じました。
第9章:人命救助への強い思い
千津さんが小学校から「人の命を救いたい」と一心に思っていた理由が、この章で明かされます。それは、彼女が幼い頃に水難事故で弟を亡くしたことがきっかけでした。この経験が彼女の人生に大きな影響を与え、その後の進路選択にも深く関わっています。
この章を読んで、私は千津さんの強い思いと、それが彼女の人生にどれだけ影響を与えているかを理解しました。彼女のように、過去の経験を糧にして未来への道を切り開く姿勢は、私たちが困難に直面したときの大きな励みとなります。
第10章:コロナ禍での挑戦
新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、ウガンダでもロックダウンが実施されました。その結果、千津さんの工房も一時的に停止することになります。しかし、彼女はスタッフたちに一か月分の給料を支払うことを決め、彼らの生活を支えました。
この章では、危機に直面したときのリーダーシップの重要性を感じました。千津さんはスタッフの生活を最優先に考え、困難な状況でも冷静に対応しています。私たちも、予期せぬ事態に直面したときに、どのように対処するかを考えることが大切だと学びました。
第11章:紛争に対する考え方とまとめ
最後の章では、千津さんの紛争や社会問題に対する考え方が述べられています。彼女は「自分は自分の思うように生きていけると思える、自分は社会に必要だ、家族の役に立つ」と実感できるなら、紛争などは起きないと考えています。彼女はウガンダのシングルマザーたちにその実感を与えることで、彼女たちの生活を大きく変えました。
この章を通して、私は千津さんの信念と、それを実現するための行動力に深い感銘を受けました。彼女がウガンダのスタッフたちの生活を向上させたことで、自分の目指していた姿に辿り着いたと感じた瞬間は、まさに彼女の努力が実を結んだ瞬間でした。
結論
「アフリカで、バッグの会社はじめました」を通じて、私は社会起業家としての仲本千津さんの強さと柔軟さ、そして彼女の行動力に感銘を受けました。この本は、単なるビジネス書ではなく、困難を乗り越えながらも自分の道を見つけた一人の女性の物語です。私も、彼女のように自分の夢を追いかけ、その夢に向かって努力を続けていきたいと感じました。
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